――いろんなものを愛撫し尽した果が、石に来るといふことをよく聞いた。
本作は、石を愛する者の伝記を数名紹介したものである。
1人目
屠琴塢(清朝の文人)
一生かけて36個の奇石を集めた。その1つ1つに名前を付けて、来客に見せびらかした。
2人目
鄭板橋(同じく清朝の文人)
石の絵を好んで描いた。なぜか醜くも、雄偉な石を描いた。
3人目
東坡(宋の文人)
「石は文にして醜だ」といった。石の醜さを含めて愛した。
4人目
米元章(宋の文人)
醜くも大きな石を見ると、衣冠を整えてお辞儀をして、その石を「兄弟」と呼んだ。
5人目
瞿稼軒(明の武人)
石を見かけると、そのまま通り過ぎることができない人だった。
石の形相を見て、襟を正し、お辞儀をして、いつまでも立ち去ろうとしなかった。
取り上げられたラインナップが、宋~清の文化人ばかりである。
詩人である薄田の嗜好によるものであろうが、やや偏りがあるのは否めない。
いわゆる"名もなき庶民たち"の石の接し方はどうだっただろうか。
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