旧ホームページより掲載します。
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須田郡司 『日本の聖なる石を訪ねて-知られざるパワー・ストーン300カ所』 祥伝社 2011年
序章に鎌田東二氏との対談を収録の豪華版。巻末には日本の聖なる石“306カ所”リストも記載し、類書に比べると資料性も抜群の一冊。
須田郡司 『日本の巨石-イワクラの世界-』 パレード 2008年
写真家としての須田氏の本領発揮を感じるのはこちら。表紙写真からして購買力をあおる魅せ方。収録写真も大きくて雰囲気漂う、日本の巨石の写真集で最もお薦め。
加藤碵一・須田郡司 『日本石紀行』 みみずく舎 2008年
『石の俗称辞典-面白い雲根志の世界-』の著者で知られる地質学者・加藤氏が文章を担当、挿入写真を須田氏が担当。付録の「日本の地質構造」「岩石の種類」「用語集」あたりが、データ収集家としては何ともうれしい。
アスペクト編集部・編 『巨石巡礼 見ておきたい日本の巨石22』 アスペクト 2011年
アスペクト社がおそらく昨今のスピリチュアルブーム、巨石ブーム(?)にあやかって刊行した巨石写真集&旅行ガイド。全国の書店で置かれている率が高いので、おそらく一般の方が最も目にする機会の多い入門書。掲載場所、文体もクセなく読める。
岡田謙二 『日本のパワースポット案内 巨石巡礼50』 秀和システム 2011年
webサイト「巨石巡礼」がカラー書籍化。パワースポット案内というタイトルとは裏腹に、文章中には民俗学的成果などを取りいれ学問に寄った内容。
渡辺豊和・柳原輝明・谷口実智代・皆神隆・前田豊・江頭務・小林由来 『イワクラハンドブック』(イワクラ(磐座)学会 学会誌 第3号) イワクラ(磐座)学会 2011年
イワクラ学会公式サイトで購入受付中。「イワクラ学」が手掛ける領域を網羅した概説書的内容。日本ピラミッドやアトランティス、UFOや反重力装置が登場するのはご愛嬌。この「遊び」の部分も十分需要がある。奥付では著者が渡辺豊和氏のみの表記だったが、実際には複数の方が著者として参加しているので表記を上記の通りとした。書誌情報上、渡辺氏の個人著作のようになっているのはどうなのだろうか。
ムー編集部 『日本ミステリー・ゾーン・ガイド<愛蔵版>』 学習研究社 1993年
学研『ムー』が取材した、日本全国の心霊スポット・超古代スポットなどを収録したガイドブック。1987年に発行した『東日本編』『西日本編』の合本。計300ページ越えの労作で、まさに「ムー的スポット」の集大成。この種の愛好家は座右に置くべき資料集。大きなカラー写真も多く読んでいて楽しいし、キナ臭い言説が漏らさず記載されているのもロマンである。巨石・磐座系のスポット紹介も多く、今でもこの本を開ける機会は多い。今はもう見ることのできない広島県「のうが高原」など貴重な場所の特集も。この1冊があれば他のオカルト旅行ガイドはいらない。
池田清隆 『神々の気這い 磐座聖地巡拝』 早稲田出版 2008年
ベネッセの元取締役員という経歴をお持ちの方で、タイトルから第一印象は今はやりのスピリチュアルな感じなのかなと思っていたのですが、想像と大きく異なり、とても真面目で真摯な視点で著されていました。引退して磐座にハマッたというクチではなく、若い頃から磐座好きだったというだけはあり、思いの入れようは半端でない。
まず磐座・磐境・石神の意味が異なっていることを指摘し、用語を使い分けているのには驚きました。職業研究者以外でこの用語整理をしている人に初めて出会った気がします。でもその後の本編ではなぜか「磐座」の呼び名でほとんど統一されちゃってますけど・・・
内容は全国から選りすぐった「磐座聖地」の探訪記ですが、根底に流れているのは「失われゆく磐座に対する懸念」「磐座が大切にされない現状への憂い」です。
千葉県安房坐神社では石碑の台座にされてしまったかつての磐座の記憶の忘却を危惧し、広島厳島では弥山頂上の展望台・レストハウス・トイレがどうにかならなかったのかと残念に思い、兵庫県越木岩神社では地震で痛んだ甑岩の修復方法に複雑な気持ちを吐露しています。とはいえ、その論調は批判的なきついものではなく、あくまでも控えめで僭越ながら言えずにはおれないといった感じなのが、なんともいいです。
岡山県阿智神社では、巷の観光ガイドは近くの大原美術館にはボリュームを割くが、なぜ阿智神社のこれほど貴重な原始庭園が取りざたされないのか、ひがむわけではないが何かおかしいのではないかといったくだりには、磐座好きの方なら共感せずにはいられません。他にも奈良県三輪山で出会った信仰登山者と自分の登山スタンスの違いに「じくじたる思い」を感じたり、三重県花の窟神社のミトノマグハイへの思いなど、こういう探訪記の中に出てくる余談や話の横道が面白く、著者の池田さんの人となりが伝わってきます。
愛媛県高山メンヒルでは、日本の遺跡を外国の言葉(メンヒル・ドルメン・スターンサークルetc)で呼ぶのは、日本に対しても外国に対しても失礼であり、筆者は磐座という日本で生まれた言葉を使っていきたいという記述にも共感しました。
私はさらに磐座・磐境・石神という表記で全国の岩・石の名前を塗り替えていくことも慎みたいと思っていて、やはり地元の人たちが名付けてずっと呼んできた、時には素朴で時にはコミカルで時には猥雑な、そんな言葉を消さないように注意したいです。
ちなみにタイトルの「神々の気這い」とは、神々がいるということを人々に理屈抜きで感じさせるような景観のあり方、景観の見せ方を池田さんなりに形容した言い方です。池田さんはこれを「磐座芸術」という言葉にもしています。自然の織り成す妙景に「美しさ-芸術」を感じることが「神の気配-気這い」を感じ取ることだという見方です。だからこそ、その気這いを感じさせなくするような後世の人々、現代の人々の配慮の薄い様々な「改変」に憂慮しているということです。
最後に一言。この本の表紙をめくると三輪山の奥津磐座のカラー写真がでで~んと掲載されています。え?撮影禁止でしょ?これはまずいんじゃ・・・と度肝を抜かれたファーストインパクトだったわけですが、本の中には福岡県御許山の石体が立入禁止だったり山形県湯殿山のご神体が写真撮影禁止なので泣く泣くあきらめている記述もあり、なぜ三輪山だけは「やっちゃった」のか。大神神社・狭井神社の人の許可を取ったという記述もなく(まず許可下りないでしょう。下りたらみんな撮っちゃう)、写真のキャプションにも特に注記されていないので、たぶん無許可でしょう。池田さんの真摯なスタンスと唯一矛盾する点でした。(2009年9月21日 管理人日記より転載)
池田清隆 『古事記と岩石崇拝 「磐座論」のこころみ』 角川学芸出版 2012年
『古事記』の記述から岩石崇拝の心を読み解く。古代の岩石崇拝には磐座・磐境・石神の他に石屋信仰とでも呼ぶべきものもあったとして、この種類の微妙な違いを感じとることが大切だとする。
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