三重県員弁郡東員町大木字南条屋敷
個人宅敷地内に現存。
所有者の方に許可を得て拝見した。


文化・文政年間(1804年~1830年)に著された松宮周節『伊勢輯雑記』に、神石としてこの石の記述がある。
元はこの地に赤口神社(社護神社)があり、久那斗神を祭神としていた(現在は大木神社に合祀)。
大木の八幡神社(これも現在は大木神社に合祀)の御旅所で、歳迎えの宮とも呼んだ。
御神体は金の鳥で、この金鳥のおかげで当地は雷が落ちても火災に見舞われることはなかったという。
(なお、当地の近辺には秋葉姓を名乗る方が多く、火伏の秋葉信仰との関連性が強い)
その金鳥が降りた石といい、石自体も神聖視された。
石に触ると「ネブト」(腫物)ができ、足を乗せると足に病が出て歩けなくなると信じられた。
しゃごさんの石(『いなべの民話』によれば しゃごんさんの石)として、東員町を代表する民話の1つとして各種郷土資料にも収録されている。
とある旅の男がこの石に腰を掛け、隣に咲いていた山つつじの枝を折って自分のわらじをはらい、そのわらじを石の上に置いた。
一休みしてから歩き始めたものの、歩くごとに足が重くなり、しびれるような痛みがさしてきた。
その時、「先ほどの石まで戻れ」とどこからか声が聞こえ、石まで戻ると、石の上にはわらじの土がくっついていて、山つつじの枝も石の周りに散らばっていた。
これが原因と恥じ入り、石の上の土を掃除して、枝も石の周りの土にさしてお詫びをしたところ、足の痛みは引いていった。
のちに、旅の男はこの時の声の主に感謝の気持ちとして、鈴鹿の山裾の村に祠をまつったという。
しゃごさんの名は、赤口神・社護神すなわちシャグジとしての石神に通じ、シャグジは境界の神と目されるが、詳細は不明である。
当地を案内していただいた地元の方によれば、本石と同じような青石を御神体に用いる神社が近辺に多いとのことである。
<参考文献>
員弁郡国語サークル編 『国民教育シリーズ32 いなべの民話』 員弁郡教職員組合 1985年
東員町史編さん委員会編 『東員町史 下巻』 東員町教育委員会 1989年
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