2018年4月22日日曜日
「あなどれない30分修行 磐船神社の岩窟めぐり」記事コメント補足~磐船神社(大阪府交野市)から考える「ご神体」信仰~
大阪府交野市私市 磐船神社
先日、朝日新聞の記事「あなどれない30分修行 磐船神社の岩窟めぐり」(朝日新聞4月18日付夕刊関西版)に、私のコメントが掲載されました。
「まだまだ勝手に関西遺産」というシリーズで、楽しく読める記事になっています。
web上にも記事本文と動画が掲載されていますが、有料会員記事なので冒頭だけ。
https://www.asahi.com/articles/ASL4F44S2L4FPTFC007.html
ライトな内容と思いきや、磐船神社の岩窟めぐりが公開された時期やきっかけについても記述があり、ためになります。
私は有識者としてのコメントを求められましたが、識者のくせして岩窟めぐりをしていないことを告白。良いオチがつきました。
ここから下は、新聞でコメントしていない部分を書きます。
磐船神社は、物部氏の祖神とされる饒速日尊がこの地に降り立ったとき、乗っていた「天の磐船」をご神体とする場所です。
船が石化したのか、もともと石の船だったのかはさておき、私が磐船神社に思うのは、なぜ神そのものではない船が、ご神体にランクアップしたのかということ。
本来の発想としては、神と船は同一視されないはずなのに、現状では神と船が同一視されているわけです。
他にも同様の磐船・岩船・石船信仰はあるため、典型的な例としてここのギャップに目を向けています。
これについては、アプローチしだいでいろいろな考え方ができると思います。
私が一つ思うのは、「ご神体」という名前が持つイメージが、時代や人によってばらつきがあるのではないかということです。
「ご神体=神の肉体」と定義してしまうと、ややおかしなことになる事例です。
霊と肉が分離しているという立場に立ったとしても、船に直接神の例が宿るという構図ではなく、船の中に神の肉体があり、そこに霊は宿るというのが、人格神としての構図だからです。
もちろん、人格神という観念から離れれば、船そのものが神の肉体とみなすこともできるでしょうが、饒速日尊の位置付けから考えて、本事例は人格神の色が濃い。
そこで、「体」 の意味をいわゆる「肉体」という意味に限定せず、「体(たい/てい)」の意味合いでとらえ直してみましょう。
体(たい)
「そのものとしてのかたち。すがた。」「物事の本質をなすもの」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/132352/meaning/m0u/
体(てい)
「外から見た物事のありさま。ようす。」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/149009/meaning/m0u/
上記2つは辞典的定義から引用しましたが、神の場合で言えば、目に見えない神の形や姿をどうにかして外から見えるようにしたものが、「ご神体」とまとめられるのではないでしょうか。
神を象徴するものであれば、それが本来の神そのものでなくても、神格をすべて表現するものでなくても、神の一つの神性を表現していれば、それは神を象徴することになりうるのです。
なぜなら、神は目に見えないから。
そもそもの出発点が無理難題から始まっているのです。
だから、神を見たくて、神に会いたくて、という人の願望が表出して、このような磐船信仰や、姿石、ご神体の概念を形作ったのだろうと想像しています。
姿石は性神に代表されるように、形が神に似ているパターンが多いですが、磐船の場合は、神の事跡のよすがを表す象徴としてあるパターンに属します。
最近、祭祀考古学ではやりの「御形」も、岩石の形が必ずしも視覚的に神格を想起させなくても神の象徴となっていると思います。
磐船神社の社殿裏に存在する「天の磐船」
磐船の下は、河川に折り重なる岩群
私はなかなか縁に恵まれず、2回訪れて2回とも増水で岩窟めぐりできず。
死亡事故がかつて起こって以来、一人での入窟もできなくなり、さらに難易度は上がりました。
境内には神仏習合の歴史も多く見つけることができます。
なぜあそこに仏を彫ったのかと、心理的な違和感を持ちませんか?
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