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2018年6月14日木曜日
磐座神社・龍王山・権現山・高巖山(兵庫県相生市)
兵庫県相生市矢野町森字神田
磐座神社という名前は、磐座に降りた神を、後世に神社としてまつったものである。
元々は神が座した岩が、神が見えないからこそだろうか、岩自体が神と同格になり、その岩をまつる神社に転化した。
拝所のこの奉納額の多さと遺存状態が、磐座神社の篤い信仰を今に伝えている。
「社殿背後の権現山を神体山として拝し高座石 座光石 天狗岳を磐座の神と仰ぐ」
降座石の別名もあるという。
「後山ガ万葉集ニヨル矢野神山デ三角錐ノ奇峰」
「天正十一年十一月社殿ヲ現地に創建 岩蔵地蔵権現ト称シタ」
「座光石 此の処に並び立つ座光石は即ち磐座の大神なり 往昔山上より天降り給ふ 磐座神社の名は是に由来す」
磐座神社の境内から後ろの山、いわゆる龍王山、権現山(天狗岳)、高巖山に登るには、この出入口を見つけて登ること。
ルートファインディングのため、国土地理院地形図を持参することが望ましい。
登り口から約20分で、鳥居と巨岩のまつり場に出会う。
ここは磐座神社の裏山に当たる龍王山の尾根上先端。
由緒板に記されていた「龍王社(奥の院) 少童(わたつみ)神 阿弥陀佛」の地である。
元文4年(1739年)の銘をもつ。鳥居の前は切り立つ斜面で道が見当たらないが、信仰の歴史を感じさせる。
巨岩の懐に、少童神をまつる龍王社がある。
周囲の岩々も、聖域を構成する磐境のような感がある。
この巨岩の逆側に回ると、もう一基堂宇が控えている。
これは阿弥陀佛をまつる奥の院である。
つまり、この巨岩は表裏で神と仏をまつりあう神仏習合の地である。
「相生市の伝説(06)-磐座(いわくら)神社の巨岩伝説」(http://www2.aioi-city-lib.com/bunkazai/den_min/den_min/densetu/06.htm)によれば、享保年間に2つの集落がこの岩と山の所有権を争った時、この巨岩に亀裂が入ったという。
複数の集落の聖地であったことが窺われるエピソードである。
龍王山から北に尾根続きで権現山(天狗岳)がそびえる。
山頂直下に大岩壁が広がり、これを天狗岩という。
麓から仰ぐと三角の稜線を描き、神体山や磐座の神と位置付けられていることから、この天狗岩も磐座であることは疑いない。
磐座神社の座光石は山の上から落ちてきた石と言い伝えられているが、それが龍王山の奥の院の巨岩のことか、 この天狗岩のことからは明示されていない。
また、磐座神社からは直接見えないが、権現山のさらに北方には高巖山という山がそびえ、山名のとおりここも巨石累々らしい。ここも含めて磐座神社の聖地とみなされているかはわからない。
神社説明板に書かれていた「高座石」が、今まで触れたどの石に該当するのか、あるいは別の石を指すのかが特定できなかった。
奥の院の巨岩に、特定の名前が付いていない様子でもある。
いずれにしても、山中に遍く存在する山の神が局所的に出現する象徴的な地として石があり、その石が存在する天狗岩、龍王山奥の院、座光石などに、時期ごと、祭祀集団ごとに祭祀の場所を変えながら降臨したのだろう。
伝説上では祭祀の場は山頂から山麓へ移ったかのようだが、禁足地の概念なども踏まえて、史実はどうだったかは即断できない。安易に奥津磐座・中津磐座・辺津磐座の概念を当てはめるのは危険である。
ただ、当地の場合は麓からでも権現山の天狗岩が遠望でき、その威容は容易に伝わるため、祭祀の場とは別に、元来の信仰の源のひとつだったとは言えるだろう。
信仰対象は山中にあることを認知しながら、祭祀の場は基本的に山麓だったという可能性もあるし、山の民の発想で言えば、山中に踏み入れて山中の巨岩で祭祀の場を設けたのも自然である。
現時点で、神道学・文献学・民俗学それぞれで山岳信仰の捉え方については諸説が入り混じっている状況であり、場所によりケースバイケースの可能性もある。
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