2020年1月19日日曜日

岩楠神社と絵島(兵庫県淡路市)


兵庫県淡路市岩屋

淡路島の北端近く、岩屋港に恵比須神社(戎神社)が鎮座する。
岩屋地区(古くは石屋とも)の産土神として崇敬を集めており、江戸時代に恵比須講が盛んになって勧請された。

この戎神社の背後に、境内社の岩楠神社(岩樟神社とも)がある。
岩樟神社は三対山の崖にできた岩窟で、濱岡きみ子氏の報告(1984年)によると、奥行き6m、高さ1.8m、幅2mの空洞を内部に持つという。




かつてはもっと長大な洞窟だったというが、背後の山上に岩屋城を築くときにこの岩窟の一部を崩したという話も伝わる。

地元では、伊弉諾尊が最終的にお隠れになった幽宮(最終的鎮座地・墓所)がこの岩窟であると信仰されている。

現在の祭神は国常立神・伊奘諾尊・伊奘冉尊の三柱だが、濱岡氏の調べでは『神社総社記』なる書物では月読尊となっており、また、長寛元年(1163年)の古記録では天地大明神なる神がまつられていたとある。

岩石信仰の観点から岩楠神社の岩窟を見ると、神霊の宿る空間を異界として明示する存在であり、異界の境界石のような働きでありながら、岩窟自体が内部構造に空洞をもつ神宿る岩石だったと考えることもできるだろう。岩窟祭祀の典型例の一つである。
恵比須信仰以前の当地の原初性を物語るのが岩楠神社の岩窟である。


なお、目と鼻の先の海岸に、絵島という岩の島がある。
伊弉諾・伊弉冉の国生み神話に登場する自凝島(オノコロ島)の候補地の一つとして知られている。



参考文献

濱岡きみ子「石屋神社」 谷川健一編『日本の神々 神社と聖地 第3巻 摂津・河内・和泉・淡路』白水社 1984年

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