2025年2月3日月曜日

橋杭岩(和歌山県東牟婁郡串本町)


和歌山県東牟婁郡串本町


紀伊串本の沖から南に浮かぶ紀伊大島に向かって、橋脚(橋杭)のように立ち並ぶ岩の列。
地質的には、マグマで形成された岩脈が後に黒潮の浸食で削られて現在の姿を見せたと考えられているが、すでに奇岩としては有名であるので本項では岩の名称と伝説についてまとめておく。

橋杭岩

名称

海岸に一番近いものを「峭立」と呼ぶ。
橋杭岩で一番高い岩を「稲荷島」と呼び、後は高さ順に「折島」「桃嶋」「平島」「鋏島」「チョンギリ島」「拝み島」「辨天嶋」「一の嶋」「二の嶋」と呼ぶらしい。
また、北に建つ大師堂に接する岩を「柱天巖」と呼ぶ。
(以上、庄司海村『古座川』ユヤ出版協会 1923年 より)

海岸に最も近い岩。「峭立」か。

写真中央が一番高い「稲荷島」か。


稲荷、辨天などの名称から、岩上や岩陰に小祠あるいは岩そのものを祠に見立ててまつった可能性がある。

伝説

弘法大師が紀伊の海岸から紀伊大島へ一夜のうちに橋を架けようとしたが、天邪鬼の邪魔によって鶏の声真似に騙されて、一夜で作れないと判断して取りやめた跡が橋杭岩という。

鬼が一夜のうちに橋を作ろうとしたが、同様に鶏が鳴いたので中止したという話もある。

紀伊大島の輿兵衛という漁夫が大島に橋を架けたいと祈願したところ、一夜で杭を建てれば上に橋を架けてやろうとお告げがあったので急いで作ったが、海の神が橋を作られると困るというので鶏の鳴き声を真似して輿兵衛はあきらめた。その後、輿兵衛は海に身を投げたためこれを哀れんだ神が橋杭岩の上に時折虹の橋を架けるという。

埼玉県坂戸市塚越や徳島県阿南市椿泊町にも橋杭岩と呼ばれるものがあり、岩を橋杭に見立てたもので同様の伝説が認められる。

(以上、日本放送協会編『日本伝説名彙』日本放送出版協会 1950年 より)

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